08月04日
(木)
2022年

ファーマコビジランスにおける自動化:機械分析ツールを使った有害事象の検出ユースケース 3例


 

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが続くなか、ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)および医薬品安全性ソフトウェア市場は、驚異的な成長を遂げています。2020年の世界市場規模は推定1億4,300万ドルでしたが、2027年には2億180万ドルまで成長すると予想されています。従来、多くの製薬会社は、主にコンプライアンス上の懸念から、ファーマコビジランスのワークフローに機械分析技術を取り入れることには慎重でした。しかし、データの量やソースの数が指数関数的急激に増加していることから、多くの企業が機械分析ツールをテスト・統合し、ファーマコビジランスのワークフローに取り入れるようになっています。

ファーマコビジランスのワークフローには、症例報告、健康管理報告書、科学文献、さらにはSNSなど、様々なデータソースが関わっています。ファーマコビジランス部門がよく理解している通り、これらすべてのソースにわたって有害事象を監視・特定・分析するプロセスは、手作業依存になることも少なくありません。ファーマコビジランスのワークフローを強化するために機械分析ツールを採用する場合、そのワークフローとプロセスは、データソースによって大きく異なることも考えられます。 

 

科学文献から有害事象を検出するプロセスの自動化:

 

現在では、多くの企業が機械分析ツールを利用して、科学文献から有害事象を特定するプロセスを自動化しています。特にXML形式の科学文献は、他のデータソースよりも簡単にテキスト分析ツールで処理・解釈することが可能です。多くの企業は、この部分からファーマコビジランスのワークフローの自動化を始めています。製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)社は、SciBite社のセマンティックプラットフォームを利用して、ファーマコビジランス能力の強化に成功したと述べています。GSKの日本法人であるグラクソ・スミスクライン株式会社は、SciBiteのTERMite Expressions(TExpress)モジュールによって、テキストに含まれる有害事象を示すフレーズの検索プロセスの自動化に成功しました。このワークフロー自動化の結果、テキストは超高速で処理、有害事象は正確に特定できるようになりました。

 

症例報告から有害事象を検出するプロセスの自動化:

 

ファーマコビジランスに関わる様々なデータソースの中でも、症例報告の処理は最もコストとリソースを消費するプロセスかもしれません。ファイザー社とその他3社のベンダーは、症例報告処理の自動化の実現可能性を検証するために予備的試験に乗り出しました。この試験では、3種類の機械分析ツールを用いて、症例報告から特定の内容を抽出および評価する精度が測定されました。そして、この試験の結果に基づき、症例報告処理に機械分析ツールを利用する、実現可能で効果的なユースケースが確立されました。3種類のツールはいずれも、症例報告から正確に有害事象を特定し、評価することに成功しています。 

 

SNSから有害事象を検出するプロセスの自動化:

 

SNSも、ファーマコビジランスプログラムの一環として監視対象となり得るデータソースです。SNSのプロセスでは、データ生成方法が標準化されていないため、品質と十分な作業時間を確保できるかが特に懸念される要素です。2018年、コンフォート社等が、機械学習モデルを利用してSNS投稿から有害事象を特定する利点について調査を行いました。その結果、83%の精度で、極めて効率的にSNSから有害事象が特定できることが明らかになりました。作業時間については、機械学習モデルを利用した場合、作業は48時間で完了しましたが、人間の専門家が行った場合、44,000時間を要すると推定されています。 

上記のユースケースは、実用的で拡張可能なファーマコビジランスのワークフロー自動化ソリューションです。機械分析ツールの活用は業界でますます広がっています。データソースに関わらず、機械分析ツールによって、ファーマコビジランス部門のコストと作業時間を削減できることが証明されています。コストや作業時間が改善されれば、企業だけでなく、患者にもメリットがあります。これが最も重要なことではないでしょうか。

 

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