国際著作権の基礎知識

著作権とは何か?

一般的に、著作権は、保護に値する作品への特定の権利の付与を通じてコンテンツクリエイターに与えられる法的保護の形態です。 著作権の中心的な目標は、権利保有者にその作品に対して金銭的利益を与えつつ、文化、科学及びイノベーションの発展を奨励すること、また、公衆の知識及び娯楽へのアクセスを促進することです。著作権は、コンテンツの権利保有者と消費者の間の関係だけでなく、コンテンツ産業における異なるプレイヤー間の関係にも枠組みを提供します。著作権は、すべての国における商標及び特許、並びに国によって異なるその他の創作物(企業秘密、独自のデータベース権、肖像権等)とならぶ、知的財産の一形態です。

世界的な著作権 作品の著作権はどの段階から保護されるのか 国際的な著作権条約 ヨーロッパにおける著作権規則 著作権によって何が保護されるか? 著作権の存続期間 パブリック・ドメイン さまざまな種類の権利 例外及び制限 フェアディール及びフェアユース 著作物の利用許諾の取得 国際レベルでの包括ライセンス 著作権及びライセンスの情報ソース

世界的な著作権

著作権は、各国における法の創造物であり、それゆえ、国際的な著作権法といったものは存在しません。そうは言っても、およそ180ヶ国が、ある条約を批准しています。すなわち、世界知的所有権機関(WIPO)により管理され、世界中の著作物の創作者の権利保護の最低限の基準を定めるベルヌ条約です。さらに、ヨーロッパ及びその他の地域でも、著作権法を調和するための取り組みがなされています。しかしながら、各国の著作権法の違いは、さまざまな国で働き、国境を越えてコンテンツを共有している従業員を抱えるグローバルな組織にとって、難題となりえます。

作品の著作権はどの段階から保護されるのか

ベルヌ条約の基本原則の1つは、「自動的な保護」、すなわち、保護に値する作品が有形媒体(例えば、紙、映画又はシリコンチップ)に固定された時から、自動的に著作権保護が存在するという意味です。「保護に値する作品」とは、文芸作品、楽曲、映画、ソフトウェアプログラム、絵画、その他のあらゆる創造的アイデアの表現をいいます。ただし、著作権法により保護されるのは表現のみであり、アイデアは保護されません。国によっては、著作権表示の使用が推奨され、また幾つかの国(米国を含む)では、著作権侵害訴訟のためには国内作品の登録が必要とされますが、著作権の取得には、公表、登録又はその他の行為のいずれも必要とされません。

国際的な著作権条約

幾つかの国際的な条約が、国ごとに合理的に首尾一貫した著作権保護を促進しています。それらの条約は最低限の保護基準を定め、それを各調印国がその著作権法の管轄範囲内で実施します。 最も古く最も重要な条約はベルヌ条約で、1886年に初めて調印されて以来幾度も改正され、今日では約180ヶ国により批准されています。ベルヌ条約は、「内国民待遇」(一の調印国で創作された著作物は、他の調印国においても、その国が自国で創作された著作物に対して与える保護と同等の保護を与えられる)、及び「自動的な保護」(著作権は、有形媒体に固定されることにより、いかなる事前の方式も必要とせず、保護に値する作品に自動的に発生する)の原則に加え、最低限の保護基準(保護される著作物の種類、保護の存続期間、例外及び制限の範囲)を規定します。 1996年に初めて調印されたWIPO(世界知的所有権機関)著作権条約は、コンピュータ・プログラム及びデータベースが著作権によって保護されることを明確にし、インターネット及び類似のネットワークを介した著作物の送信は、元々創作者が所有する著作権の範囲に含まれる独占権であることを確認しています。また、同条約は、(i)著作物に施された技術的保護対策の回避、及び(ii)著作物に組み込まれた権利管理情報の削除の両方を、著作権の侵害として分類しています。 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)もまた、1996年に締結され、世界貿易機関により管理されており、知的財産権の行使に関する多数の条項を含みます。TRIPS協定は、国内法令が知的財産権の実効的な権利行使を可能にしなければならないことを定め、権利行使の具体的な方法を詳細に記述しています。

ヨーロッパにおける著作権規則

欧州連合における著作権法を調和するための取り組みの結果として、2001年情報社会における著作権および関連権指令を含む多数の規則が制定されました。 情報社会における著作権および関連権の特定の側面の調和に関する指令(2001/29/EC)は、2つの主な目標を持っていました。すなわち、ヨーロッパの著作権法に技術的発展を反映すること、及び1996年のWIPO(世界知的所有権機関)の2つの条約の条項を、すべてのEU加盟国の法律に導入することです。 この指令は、EU加盟国全体に渡り、技術的保護手段及び権利管理システムの法的保護や、複製、販売及び公衆への送信の権利を調和させました。また、著作権の制限及び例外の網羅的なリストを含んでいましたが、その大半は、EU加盟国が自国の法令で施行するかどうかは任意とされました。情報法研究所(アムステルダム大学)による後の研究は、EU加盟国に提供されたそれらの選択の自由が実質的に調和を妨げていたと結論付けています。 もう一つの重要なヨーロッパの法令が、2004年の知的所有権の執行に関する指令で、これを受けて2009年に欧州模倣品・海賊版監視部門が設立されました。

著作権によって何が保護されるか?

ベルヌ条約は、すべての調印国における著作権保護は、最低限、その表現の様式又は形態が何であれ、「文芸、学術及び美術分野におけるすべての作品」を含む「文芸及び美術作品」にまで広がるべきであると規定しています。 著作権により保護される作品のカテゴリーの詳細なリスト―及びそれぞれ具体的な定義及び範囲―は、国によって多少違いますが、一般的は、学術記事、随筆、小説、短編、詩、戯曲及びその他の文芸作品、描画、絵画、写真、彫刻及びその他の2次元及び3次元の芸術作品、映画及びその他の視聴覚作品、並びに楽曲、ソフトウエア等を含みます。

著作権の存続期間

著作権の存続期間は、著作物の種類(及び問題となる特定の権利)により、国ごとに異なります。ベルヌ条約は、文芸作品の著作権の最低存続期間は、著者の死後50年と定めていますが、今日ほとんどの場合、ほとんどの国では、文芸、演劇、音楽又は美術作品の著作権は、著者の死後70年経過した年の12月31日まで存続するというのが一般的な定めです(通常「life plus 70(死後70年)」と呼ばれます)。 国によっては、一般的な死後70年ルールに変更や追加を加える定めが適用される場合があります(例えば、第二次世界大戦の期間について延長を認めるなど)。さらに、国によっては、一般的ルールの採用前に、異なる著作権の存続期間を定めていました。例えば、米国は、1978年まで、「life plus(死後何年)」という著作権の存続期間を採用していませんでした。各国の法令におけるこのような違いは、特定の作品について、ある国ではまだ著作権は存続しているにもかかわらず、他の国では著作権の存続期間が切れている(すなわち、パブリック・ドメインとなった)ということもあり得るという事実を示しています。

パブリック・ドメイン

パブリック・ドメインとは、(i)もはや著作権によって保護されない(すなわち、著作権が失効している)作品、及び(ii)著作権により保護されない作品のカテゴリーに属している作品をいいます。 さらに、いくつかの国(米国や、特定の目的については英国も含みます)では、政府の作品は、それらが創造された瞬間から、パブリック・ドメインである(著作権により保護されない)ものと法令で定義されています。 このように、各国の著作権法がどのように著作権の存続期間を定義し、どのように保護される作品のカテゴリーを定めるかが異なるために、パブリック・ドメインの定義が国ごとに異なることになります。 ヨーロッパでは、ヨーロピアーナ・コネクト・プロジェクトが、有用なパブリック・ドメイン計算ツールを開発しています。

さまざまな種類の権利

ほとんどの国の著作権法は、著作権の内容として2つの異なる種類の権利 ― 財産権と著作者人格権を認めています。 英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、英米法の国々は、財産権を強調し、著作者人格権の存在を最小化する傾向にあります。 財産権又は利用権は、権利保有者が著作物の利用、利用許諾、又は利用禁止を行ったり、その利用条件を定めたりする権利を認めます。著作物のさまざまな具体的な利用(又は「利用行為」)は、独立して取り扱うことができます。これは、権利保有者が、各権利を、それぞれの利用の種類ごとに取り扱うことができる(利用、譲渡、ライセンス又は販売など)ことを意味します。財産権は、一般的に次のものを含みます。

  • 複製権(例えば、デジタル又はアナログの手段による複製)、
  • 有形的複製物による頒布(例えば、複製物の販売又は貸与)、
  • 公衆への送信(インターネットのようなデジタルネットワークを介した公の上演、表示及び頒布を含みます)、及び
  • 翻案の権利(テキスト作品の脚色又は翻訳を含みます)。

著作者人格権は、著作物がその著作者又は創作者の個性及び人間性の表現であるという考えに基づきます。著作者人格権には以下の権利が含まれます。

  • 著作物の著作者として特定される権利、
  • 同一性保持権(すなわち、著作物の変更、切除又は改変を禁止する権利)及び
  • 著作物の最初の公表権(すなわち、公に発表する権利)。

著作権人格権は、常に創作者から第三者に譲渡され得るわけではなく、国によっては失効しないものもあります。

例外及び制限

著作権の例外及び制限は、著作物の利用には権利保有者の事前許諾が必要であるという一般原則が適用されない、法律により定義される特別な場合です。すなわち、権利保有者の利益とコンテンツユーザの利益のバランスを維持するという公共の利益のために、著作権で保護された著作物を権利保有者の許諾なしに利用することが許される場合があるのです。 一般的に、著作権の例外及び制限は、ベルヌ条約で最初に定められ、多数の他の国際的な条約で繰り返されてきた3段階のテストを条件としています。簡潔に述べると、ベルヌ条約は、著作権の例外又は制限を、(1)特別な場合のみを対象とするもので、(2)著作物の通常の利用を妨げず、かつ(3)著者の正当な利益を不当に害さない場合のみ許容されると規定しています。 かかる基準の範囲内で、例外及び制限は、国ごとに、その数や範囲、それにより利益を得る者、及びそれにより権利が制限される権利保有者に対する補償義務を含むか否かについて、大幅に異なります。

フェアディール及びフェアユース

ほとんどの国は、自国が定めた著作権に例外と制限を具体的に特定していますが、英国及び米国は、それぞれの法令において広範な例外を定めています。 英国及びそのかつての植民地の多く(アイルランド、カナダ、香港、オーストラリア及びニュージーランド)において、「公正取引」の原則は、事前許諾が必要とされない利用の広範な範囲を定めています。公正取引とされるものの判断基準は、すべての具体的にありうる利用には言及せず、これらの国々のそれぞれの法律で定められています。米国(また、ここ最近では、イスラエル、ポーランドやもしかすると他の数か国)では、「公正利用」の概念により、利益衡量により、著作権保有者の権利を十分に侵害しないと見なされ、又は重要な公共の目的を十分に果たすとみなされ、著作権保有者の許諾なしに許容される一定の利用が定められています。裁判所によって判断された公正利用の判断要素は、各国の法令及び判例法で定められています。

著作物の利用許諾の取得

著作権法は、書籍、学術誌、雑誌又は新聞などの著作物を購入することによっては、買主はかかる著作物について著作権の影響を受けるいかなる利用も許諾されない(買主に購入したコピーを自由に廃棄する権利は付与されますが)ことを示しています。これは、購入したコピーを読むこと、その他の方法で楽しむことや、再販すること、贈与すること又は破壊することは許されるものの、そこに化体された著作物は、複製、上演又はその他の著作権法の範囲に含まれる方法で利用してはならないことを意味しています。 著作権の影響を受ける利用の必要がある場合(業務利用のための複製など)、その許諾は通常、権利保有者から直接、又は権利保有者を代理して許諾する権限を付与された第三者組織から取得することができます。国によっては、かかる許諾は、指定された支払をすることにより、法律により許諾が付与されます(法定ライセンス)。

国際レベルでの包括ライセンス

多くの国では、著作権管理団体(著作権料徴収団体又は「CMO」としても知られています)が、多数の権利保有者を代理して、著作物の大量の利用についてライセンスを付与し、それらの利用のための著作権使用料を徴収し、権利保有者にこれらの著作権料を分配しています。 著作物及びクリエーターのさまざまなカテゴリーを専門的に扱う著作権管理団体もあります。テキスト及び画像ベースの著作物の分野において、これらの団体は、複製権機構(RRO)と呼ばれます。それらは、一般的に、紙媒体及びオンライン又はデジタルフォーマットの両方で、書籍、専門誌、新聞及び雑誌の二次的利用のライセンス付与を取り扱っています。また、映画、写真及びイラストなどのビジュアルコンテンツを取り扱う場合もあります。 RightsDirectの親会社であるCopyright Clearance Center (CCC)は、それ自体が複製権機構(RRO)です。長い歴史を持つ高度な組織から発展途上国にある新興企業に至るまで、約80ヶ国にRROがあります。ほとんどのRROは、世界複製権機構(IFRRO)に属しています。 世界中のRROが、その地域の著作権法により要求又は許された異なるライセンスモデルで運営しています。IFRROのクイックガイドによれば、RROのライセンスモデルには3つの基本的タイプがあります。

  • 任意型包括ライセンス
  • 法的サポート付きの任意型包括ライセンス
  • 法定ライセンス

RROによっては、3つのライセンスモデルの特徴を組み合わせて提供しているものもあります。RRO のライセンスはまた、それらが含む著作物の数や種類、許諾する利用の種類、及び地理的範囲においても異なります。

著作権及びライセンスの情報ソース

グローバルな視点から、知的財産権及び著作権の最前線の組織について学びましょう。