09月22日
(金)
2023年

情報のプロがグローバル製薬企業のパイプラインに影響を及ぼす方法を解説


情報チームがグローバル製薬企業のパイプラインに影響を及ぼす方法

 

今日、主要製薬企業にとって大きな課題になっているのは、大学やバイオテクノロジ分野から将来性のある新しいアイデアを体系的に見つけることです。いくつかの新薬を発見すれば製薬企業の将来は安泰だった時代は終わりました。そこで今、企業は新薬のパイプラインを増やすために、新たな治療分野やテクノロジを模索しています。これらの新分野においては、どんなに優良な企業であっても世界中の研究者からのインプットを必要としています。しかし、世の中に出てくる新しいデータの量は膨大で、手作業ですべてを調べるのは不可能です。糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)、心臓病などの研究者は、一見関係があるように思われる新たな出版物、特許、補助金、スタートアップなどの情報に、毎週500件は軽く出くわしています。

では、どのようにすれば、それらの情報を体系的にふるいにかけ、最も関係が深く、さらに追求すべき候補を見つけ出すことができるのでしょうか?

 

「作れますか?」

 

これは、初期研究部門の責任者が数年前、情報部門に連絡をしてきて、私と同僚に投げかけた課題です。「作れますか?そのためには何が必要ですか?」

「もちろん、作れます」 私の上司はそう答えて、サーベイランス、自然言語処理 (NLP)、情報ソース、自社の治療分野に強い、優秀な情報研究者を集めてチームを作りました。チームが一致団結して前に進むように、私はプロジェクト管理を任されました。情報とITの交差するところでほとんどのキャリアを費やしてきた情報プロフェッショナルにとっては、重大ながら、非常に張り合いのある挑戦でした。

求められていた体系的なサーベイランスの仕組みを創出するためには、次の3つが必要でした。

  1. 広範な情報ソースからのコンテンツ
  2. コンテンツをフィルターにかける効果的な方法
  3. 関連のあるコンテンツを共有する効率的な方法

情報ソースについては、文献、データベースパイプライン、特許が当然、頭に浮かびますが、先回りするつもりで、会議のプレゼンテーション、技術移転部門、スタートアップについてのニュースも、新たなアイデアやインサイトを抽出する上で、加えておくと興味深いものです。

 

「単なる」検索ではない

 

私たちは、特定の研究者グループ、あるいは個人にターゲットを絞った情報の流れを作りたいと思っていました。しかし、従来型の「単なる」検索はできません。というのは、何が出発点になるのかという問題があるからです。新しいもの、特に画期的なものを探そうとする時、私たちは会社名も薬品名も行動様式も遺伝子標的も知りません。私たちが知っているのは、全体的な治療分野だけで、その初期段階で斬新に思われるすべてに目を向けたいと思いました。

結果を絞り込むために、NLP、人工知能 (AI)、人間によるレビューを組み合わせて適用しました。

  • テキストマイニングツールを用いて、テキストから企業や遺伝子名などの主要なコンセプトを抽出することができました。エンティティ抽出は遺伝子名、薬品名、企業名などを引き出すことができ、オントロジーに従って標準化するのに役立ちます。たちまち、何千ビットの非構造化テキストではなく、エクセルのような列にソート、リンク、レビューが可能な構造化データができました。
  • AIは、かつて興味深いと思われたものに対して、新しいテキストがどの程度類似しているかを判定するのに役立ちました。これは、新しい文献の言語学的なフィンガープリントとトレーニングセットを比較することで行われました。完璧からはほど遠いにしても、情報として示唆するものはあります。例えば、後期段階の臨床活性のフィンガープリントは、非常に初期の探索科学において私たちが求めているものとは異なります。
  • 人間によるレビューは、AIが間違っていた時にはそれを修正できる付加的なエクスペリエンスおよび常識として、なおも非常に貴重です。当該分野で広範なエクスペリエンスを持つ専門家はパターンを見つけ、研究者に注意を促すことができます。

最終的な結果は高度にキュレートされたニュースレターで、最も関連が深い機会が示されていました。これは中核的な研究者だけでなく、新しいアイデアの質と実現可能性についてインプットができるあらゆる人と、幅広く共有されました。現在、数年を経て、このサービスは8つの事業分野に広がっており、好ましいフィードバックが得られています。しかし、需要もはるかに大きくなっています。目下の課題はどのように大幅に拡張するかです。

 

2倍の仕事を半分の時間でできますか?

 

実用的なソリューションが見つかったところで、私たちは次に拡張性に目を向け始めました。質問は「2倍の仕事を半分の時間でできるか?」になりました。私たちはできると思いましたが、そのためにはやり方を変える必要がありました。

人間によるキュレーションは高額で、必要に応じて新たな分野に拡張する能力については限界があります。私たちは、非構造化テキストから主要なポイントをランク付けして、抽出するのを支援するプロセスに、すでにいくつかの機械学習アルゴリズムを実装していました。しかし、AIを人間のパフォーマンスにさらに一歩近づけるにはどうすればいいのでしょうか?

想像してみましょう。

  • アルゴリズムで、かつてこのターゲットを扱ったことをすぐに認識できたらどうでしょうか?
  • まさに今この瞬間、競合会社がパイプラインに含めている同様の薬を見つけることができたらどうでしょうか?
  • あるニュースがソーシャルメディアで話題になるかを知ることができたらどうでしょうか?
  • 発行物の背後にいる研究グループの信頼性を知ることができたらどうでしょうか?
  • これまでにピックアップしたものに基づいて、企業や研究グループのタイムラインを知ることができたらどうでしょうか?

そして、入ってくるデータの順位付けや提示にこのような情報を用いることができたらどうでしょうか?

  • コンテンツをより効率的に順位付けすることができるでしょうか?
  • 研究者はさらに多くのコンテンツにより早く目を通すことができるでしょうか?
  • さらに深掘りするものについて、より良い決定ができるでしょうか?

歯がゆいことに、必要なデータは全てすでにあります。しかし、アクセス、ライセンシング、さまざまなユーザーインターフェイスなどが、実質的な阻害要因になっています。各ソースを手作業で確認するのは、非常に時間がかかります。そのようなことをしていたら、価値を付加する情報が活用されることはまれで、意思決定の役には立ちません。

私たちが目指すのは、すでに私たちがすでに持っているコンテキストと合わせて、新しい情報を提示することです。そのためには、社内外の既存のシステムのデータに新しいデータを結び付け、統合する必要があります。情報プロフェッショナル、研究者、協業している開発業者にとって、これは楽しくも、やりがいのある仕事だと言えるでしょう。

最終的な成果は、評価を迅速化し、研究者が重視していることに合わせて、動的な方法で、大量のデータを提示する機会をもたらします。研究者が重視していることについて学ぶため、各研究者についてプロフィールを作成することを検討してもいいでしょう。

研究者にとっての価値は、自分が重視していることに合った最新の機会が定期的に得られることにあります。そして、その際、より情報に基づいた決定をするのに十分なコンテキストを伴っていれば、私たちは早期の発見の中核的なプロセスに影響を及ぼします。製薬業界では、優れた判断と時期こそが、コストの節約と利益の獲得の両方に直結します。それは、どこかですでに失敗した何かを持って研究室に行くのではなく、実現しうる中で最高の機会にリソースを集中させられるからです。

 

同様のサーベイランスの仕組みが必要ですか?

 

同様の状況にいるなら、つまり、パイプラインに含める最も関係の深い候補を効果的に特定するのに役立つ拡張可能なサーベイランスの仕組みを探しているのなら、私がまず提案するのは、一からすべてを構築しないことです。そうではなく、市場に出回り始めている新しいシステムを評価しましょう。ソリューションを求めているなら、以下の質問がカギを握るでしょう。

  • 自社のユーザーにとってはどのようなコンテンツがカギになりますか?
  • すべてを1ヶ所で見つけられない場合、その他のデータ(社内外のシステム)とのどのような統合が必要になりますか?
  • どれくらい自動化すべきで、一方、アラートにどの程度のノイズがあっても許容しますか?
  • ターゲットを絞った情報を自社の主要グループに配信する方法として、どのような選択肢がありますか?

CCCのRightFind Suiteは、堅牢なソフトウェアソリューションで、時と場所を問わず、科学的研究を推進し、著作権問題をシンプルにします。パーソナライズされた検索を複数のデータソースにまたがって行い、極めて関係の深い発見に結びつけることも、科学論文を横断してAIによる発見を推進することも可能です。CCCのディープサーチソリューションは、必要なすべての市場情報をノイズなく提供します。

 

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