04月24日
(水)
2024年

2024年にすべての情報プロフェッショナルが考えるべき5つのAI関連トピック

By Keri Mattaliano
本ブログ記事は2023年12月19日に原文が投稿されたものの翻訳になります。

 

ChatGPTなどのツールは、検索機能に対する私たちの期待に変化をもたらしています。テクノロジーが現在どのような段階にあり、どのようなリスクをはらんでいるのかといった問題とは関係なく、ユーザーは、人間が用いる自然言語で質問すれば、AIを搭載した機械がほぼ瞬時に完璧な回答を作り出してくれることを、ますます期待するようになっています。今、大人の間でそのような期待の移行が急速に進めば、10年から15年後、それを現実として人生の大半を過ごしてきた若い研究者はどうなっているかを想像してみてください。

では、情報プロフェッショナルは、AIテクノロジーの飛躍的な発展によって引き起こされる環境変化にどのようにアプローチすれば、情報センターの認知度を高め、価値を提供することができるでしょうか?役割を担うことができる以下の5つの分野を検討しましょう。

 

1. コンテンツにAIを利用する際の著作権の疑問

 

情報マネージャーは著作権の専門家だと思われていることがよくあります。著作権専門の弁護士であることは少ないと思われますが、それでも著作権については非常に深い知識があり、それによって企業のリスク低減を手助けすることはできるでしょう。AIのユースケースが増えているのを見るかぎり、この状況は続くと思われます。

 

組織内の部署が独自のAIプロジェクトを立ち上げる時、あるいはAIを活用したツールのライセンス供与を始めようとする時、彼らは「このアルゴリズムのトレーニングを行うにあたって著作権が保護されたコンテンツを使用する時、自分にはどのような権利があるのか?」「アルゴリズムのトレーニングに用いたOAコンテンツの帰属を、アウトプットと同様に、どのように正確に示すことができるのか?」「このツールにおいて私自身の知的所有権はどのように保護されるのか?」といった質問をすることができないかもしれません。その時のリスクを考えてみてください。これらのプロジェクトが形になる前に、情報プロフェッショナルは、正確な著作権情報について組織内のリーダーであり、リソースであると認識されていることが重要です。そうなっていれば、議論に参加し、自社が背負うリスクの低減に貢献できるでしょう。

 

手始めに、CCCの Intersection of AI and Copyright (AIと著作権の交点)のページを参照してください。責任を持って、著作権で保護されたコンテンツでAIテクノロジーを開発および利用するうえで、情報源として役に立つでしょう。

 

2. AIに用いるコンテンツのライセンス供与

 

情報マネージャーは、科学文献やデータベースなど、組織全体で利用できる定期購読物のライセンス供与をすでに担当していることが多いでしょう。したがって、情報マネージャーは、社外で生成され、著作権が保護されている出版社の素材をAIプロジェクトに使用するにはどのようにするのが最適かを決定するにあたっても、特別な立場にいます。情報マネージャーがコンテンツのライセンス供与で中心的な役割を担っているのであれば、組織全体でニーズを評価し、効率的に処理を行い、自らのAIプロジェクトのことばかり考えているサイロ化されたグループから、ライセンスに関する負担を取り除くことができます。

 

3. AIテクノロジーに関する企業ガイドラインおよび戦略的指示

 

情報マネージャーからますます聞くことが増えているのは、組織の上層部が、AIを活用した技術の導入で効率性を改善し、成果を上げることについて、ゴールを示し、期待を設定しているということです。誰もがChatGPTを試し、ほとんどのテクノロジーが、良くも悪くも、何らかのLLMあるいは生成AIをツールに取り込んでワークフローを改善しようとしている今日の状況を考えると、上層部の指示はもっともです。しかし、これらの指示は、テクノロジーの現状や限界、さらにはAI利用におけるリスクを考慮していないかもしれません。

 

適切に使用すれば、AIはR&Dに大いに役に立つことが期待されますが、AIシステムはまた、デタラメ科学を生み出し、誤った、あるいは誤解を生む結論を導き出し、誤情報を拡散し、有害な結果をもたらす危険性も秘めています。これまでにも、大規模言語モデルの幻覚についてはさんざん聞かされてきたとおりです(幻覚と言えば聞こえはいいのですが、要はAIがファクトをでっち上げることです)。これらの問題の多くは、真のナレッジを有しているシステムではなく、テキストをもとにした予測ツールとしての生成AIの根本的な性質に関連しています。トレーニングデータの品質、正確性、偏りがアウトプットに影響を及ぼします(よりシンプルに言えば、ゴミを入れたら、ゴミが出てくるということです)。同様に、トレーニングが不足している領域にLLMを適用しても、幻覚を引き起こすことがあります。検索拡張生成(RAG)のような技術が、これらの問題に対処するために追求されています。これはまた、ライフサイエンスにおいてAIを利用するにあたっては、人間による大がかりな結果検証が必要であることを意味しており、そうなるとAIに期待された効率性は低下することになります。つまり、私たちはAIが活用された未来について、楽観と合わせて、健全な懐疑心と警戒心を目にしているということです。

 

また、AIの利用について、企業ガイドラインを採用する組織は今後ますます増えると思われます。たとえば、どのようなデータをプロジェクトに使用してよいか(より重要なのは、使用してはならないか)、アウトプットを何に利用してよいか、どのようなタイプのツールを使ってよいかといったことです。多くの組織は部署の枠を超えたAIグループを立ち上げ始めており、そこでは法律、IT、その他のステークホルダーが、社内で使用にゴーサインを出す前に、提案されているユースケースを評価しています。

 

幸いにも、情報マネージャーは、ライセンス供与および管理の側面はもちろん、検索、合成、結果の検証においても情報の専門家です。私は、議論に参加を求めた複数の情報マネージャーに話を聞きました。情報マネージャーは、これらのツールのアウトプットの評価を支援し、それらがAIに対する期待を実現しているかを確認するうえで、カギを握っています。情報センターはここで自らの認知度を高めることができます。その際には、さまざまな部署がツールに何を求めているのかを評価するのを手助けし、著作権に準拠し、社内のガイドラインを遵守する方法でデータとコンテンツを使用する方法を決定に導きます。そして最も重要なこととして、アウトプットの検証を手助けします。

 

4. 予算の曖昧さ

 

AIにコンテンツを利用するにあたっては、予算の問題もあると考えています。単独のプロジェクトあるいはグループに携わっている個人が、特定のニーズのために、情報センターに相談することなく、直接ライセンスを交渉するケースが見受けられます。そうなると、複数のグループが互いに気づかず、他のグループと共同で利用できることも考えず、同じ出版社と交渉しているかもしれません。これは結局、誰が予算を握っているのかという問題でもあります。前述したように、情報センターが予算を握っていれば、組織全体を精査し、特定の出版社に対するニーズのすべてを把握し、それに応じて交渉にあたることができます。しかし、そのためには、情報センターに応分の予算増額が必要でしょう。

 

私は、ここでこそ、データサイエンス部門および経営陣のスポンサーシップとの緊密なパートナーシップが威力を発揮すると思います。単純化して言えば、これが最もうまくいくのは、AIに用いる使用許諾コンテンツと使用許諾予算を管理する権限が、情報センターに与えられている時です。あるいは、AIプロジェクトの交渉が成功するのは、データサイエンス部門とその他の部門、具体的には情報センターを交渉のプロセスに関与させ、必要な資金投資を適正に分配して支援する部門との間で緊密な連携ができている時です。

 

情報管理業界の高名なソートリーダーでコンサルタントのMary Ellen Bates氏は最近、CCCのためにリサーチプロジェクトを行い、情報プロフェッショナルはデータプロフェッショナルとどのように連携すれば、ますます複雑化し、相互の関連を強める情報環境において、クライアントにインテリジェンスを提供できるかを分析しました。データサイエンス担当者との連携は、両チームが各々の強みを相互に活用することにつながり、戦略的で貴重な前進になると私たちは確信しています。

 

Mary Ellen 氏による以下の3つの関連記事を参照してください。

 

5. 時代の最先端にいること

 

急速に変化する今日のAI 環境において、情報マネージャーには多くの責任があります。その中には、AI著作権の専門家であること、急速に変化する新しい方法でコンテンツのライセンスを供与すること、部門をまたがるチームに参加すること、ステークホルダーと連携して適切な予算を提案することが含まれます。情報マネージャーは急速に進化するAI技術の先頭に立ち、ベンダー、使用されているAIの種類、ユースケース、潜在的なリスクを適切に評価できなければなりません。まさに全く新しい考え方や働き方を学ぶ必要があり、そうすることで豊かな可能性が開かれます。ボストンで最近開催されたPistoia Allianceの会議で、ライフサイエンス界のリーダーから繰り返し聞いた言葉があります。それは「情報マネージャーの仕事がAIに取って替わられることはないが、AIに消極的な情報マネージャーは、AIを積極的に活用しようとする人に取って替わられるだろう」というものです。不安がモチベーションの一部になっているのかもしれませんが、私が話をした多くの情報プロフェッショナルは、これらの新たな任務を引き受けていました。そうすることが、自分の地位を確立するうえでも、自社の効率性を向上させるうえでも役に立つと知っているからです。

 

しかし、本来の仕事もあります!認識し、提唱すべき最も重要なことの一つは、戦略的AIゴールに向かう組織を情報センターがどのように支援できるかに集中するために、支援と力が必要だということです。これはおそらく難しい注文でしょう。ひとりでライブラリアンを務めている場合や情報センターがすでにフル稼働状態の場合はなおさらです。前向きな発想で進化する新しいライブラリーサービスを展開するには、社内の主要なステークホルダーやリーダーシップに潜在的なメリットを売り込むことが必要になるでしょう。